工業用クロムめっきは硬質クロムめっきとも呼ばれ、このめっきが実用化されはじめて70年になります。
多くの産業分野で、例えば機械工業、金属加工業、印刷工業、運輸関係、
さらには原子力関係、化学繊維製造部品やパチンコ玉に至るまで広く用いられ幾多の問題を解決してきました。
このように工業用クロムめっきが広く用いられる所以は硬さが大きく摩擦係数が小さいので耐磨耗性に優れていること、めっき面が緻密で平滑であるため成型物などの表面が滑らかで、かつ離型性が良好なことが挙げられます。またクロムは外観が美しい金属色を持ち大気中でも変色せず薬品にも比較的強いので耐磨耗性を必要としている機械部品のめっきには良く用いられます。
①高硬度 | めっき皮膜の硬度はJISで規定された微小硬さ試験法で測定し、マイクロヴィッカース(Hv)などで表示します。 地球上でもっとも硬い天然鉱物はダイヤモンドでルビーでも結構硬くHv1300もあります。 硬質クロムめっきは通常の電気めっきの中ではもっとも高硬度で熱処理鋼、窒化鋼などより遥かに高いHv800~1200の範囲のものが用いられます。 |
②耐摩耗性 | 硬質クロムめっきに要求されるもっとも重要な基本的性質でありきわめて良好です。 図1参照。 |
③耐熱性 | 加熱によって硬度は徐々に低下していきますが当社が硬質クロムめっきを施した熱間鍛造金型は700℃の条件下でも良好な結果がえられます。 |
④耐食性 | 塩化物以外の化学薬品に対して安定で大気中でも10μm以上の厚さをもつ皮膜は比較的良好な耐食性を示します。 |
⑤肉盛性 | 寸法補修や修理を目的としますが、同時に耐磨耗性,高硬度、切削加工性などが要求されるのが普通で印刷用ロールやシリンダー、各種シャフト軸受、金型などの修理や寸法調整には硬質クロムめっきが活用され金型や磨耗したシャフト類は修理再生させる方が経済的であり寿命も遥かに延長させることが可能です。 |
⑥型離れ性 | 金型に要求される特性で一般的には同時に高硬度も必要となるため硬質クロムめっきが活用されています。ウレタンゴムのように型離れ性の悪い素材の金型では硬質クロムめっきを15μm施し、さらに離型剤を使用しています。 |
クロムめっきは金属クロムです。金属クロムはステンレスなどに含まれている安全な金属です。
硬質クロムめっきに使用する原材料は六価クロムです。
その取扱いには十分な注意が必要です。
当社ではめっき後の品物に付着したクロムめっき液を
社外に持ち出さないよう十分な水洗いをしております。
クロムめっき液は一般的に水洗いによって完全に洗い流す事ができると言われております。
硬質クロムめっき作業の工程は素材の表面状態やその用途により必ずしも一定ではありませんが、一般的には次の通りです。
①素地仕上げ | 素地の表面状態はそのままめっき面に反映するので求められている仕上がり面と同様な素地仕上げを行う。 バフ研磨・液体ホーニング・サンドブラストetc |
②表面清浄化 | 強い密着力を得るために前処理工程として研磨後の脱脂は必須である。 溶剤洗浄、酸洗、アルカリ洗浄などの工程は一般めっきと同様ですがめっき前、陽極処理を行うので酸洗、アルカリ洗浄は省略することもある。 また液体ホーニング、サンドブラスト等で素地仕上げをした場合も省略する。 |
③マスキング | 部分的にめっきする場合はめっき不要部分にビニルテープやメタルテープなどでマスキングする。 |
④治具取り付け | 電流分布が一様になるように補助アノード(陽極)をつけたり、こげ防止の補助カソード(陰極)を設けて過剰な電流を逃がす必要がある。そのため電極配置を伴った治具をそれぞれ製品にあったものを設計し、使用する。この治具の設計が製品の品質を支配する。 |
⑤逆電解 | めっきに先立って逆電解を行い表面の徹底した洗浄化によりめっきの密着性の向上をはかる。 |
⑥めっき | 電着に先立って対象素地の表面積を出来るだけ正確に算出し、これに要する通電量をもとめる。 |
⑦水素除去 | クロムめっきには大量の水素が吸蔵され素地にまでおよび、これが原因でめっき対象品がもろくならないように水素除去を行う。 |
⑧仕上げ・養生 | 厚み、仕上がりなどの検査 |
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